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日本では硫黄酸化物や窒素酸化物による大気汚染がひどい時期があり、瑞息などの公害病が発生したので、硫黄酸化物や窒素酸化物は早い時期から厳しく規制きれていました。 その一方で、自動車排ガスに含まれる浮遊粒子状物質の対策は、後手に回ってしまいました。
都市部の浮遊粒子状物質濃度がなかなか下がらないことにしびれを切らした南関東の都県と政令市が、大型ディーゼル車に厳しい排ガス規制をかけたのは2003年3月のことです。 国はこの規制を追いかける形で、排出基準を強化しています。

ディーゼル自動車の排ガスに含まれる粒子状物質は、セラミックなどでできたフィルターで除去することができます。 フィルターに残った粒子状物質は、自動的にバーナーやヒーターなどで焼却されます。
このような除去装置が、トラックにも設置されるようになりました。 その成果かどうかはっきりしませんが、沿道に設置された観測ステーションの中で浮遊粒子状物質の環境基準を達成したものの割合は、1999年度の17・2%から2002年の17・3%まで急速に低下してきていたのに、2004年度には17・1%にまで一気に上昇しています。
ディーゼル・エンジンとガソリン・エンジンは、どちらもシリンダーに燃料と空気を入れて圧縮し、爆発させます。 その圧力がピストンを押し下げて、車輪を回転させるのです。
両者の違いは、燃料と爆発のさせ方にあります。 ガソリン・エンジンでは、シリンダーにガソリンと空気の混合気を入れ、これを圧縮して点火し爆発させます。
ディーゼル・エンジンでは先に空気を圧縮し、そこに軽油を吹き込む。 気体は圧縮されると熱を持つので、その熱で自然発火して軽油が爆発します。
ディーゼル・エンジンでは燃料と空気の混合が十分にいかないため、不完全燃焼が起こりやすくなって、浮遊粒子状物質がガソリン・エンジンより多く排出されてしまいます。 燃費がよければ、同じ距離を走った時に排出される二酸化炭素の量は少なくなります。
いままでのディーゼル車は浮遊粒子状物質が多かったので、地域の大気環境によいとは言えませんでしたが、地球温暖化防止の観点からはガソリン車よりも「環境にやさしい」。 実際、地域環境より地球環境に関心が高いヨーロッパでは、ディーゼル車が環境にやさしい車として宣伝されています。

もっとも、日本のディーゼル車の排ガス規制は年毎に厳しくなり、現在販売されている新車の排ガスは、これまでのガソリン車とほとんど変わらないところまできました。 そして、ディーゼル車やガソリン車よりもっと燃費がよくて大気汚染物質の発生も少ないハイブリッド車、電気自動車、燃料電池自動車などが次々と開発されています。
ではガソリン・エンジンの方があらゆる面で優れているかというと、そうでもありません。 エンジンを動かす時に消費きれるエネルギーと、エンジンが行なう仕事量の比を「熱効率」と言います。
熱効率は燃焼温度が高いほど良くなりますが、ディーゼル・エンジンはガソリン・エンジンより高温で燃焼するので熱効率が良い、つまり燃費がよいのでガソリンとディーゼルのどちらが「環境にやさしい」か、ということを議論している時代ではなくなったのかもしれません。 運転時の排ガスだけでなく、自動車が製造される時や、中古車が廃棄されたりリサイクルきれたりする時に、環境にどのような影響が及ぶかを考えることも大切です。
D社はブラジルのバラ州マラジョー島にある工場で、現地で採れるココナツ繊維を使ったシート・クッション、バックレスト、ヘッドレストなどを生産し、同社のMに使用しています。 そうすることで、石油を原料とするパーツが減り、原料採取、材料製造時の環境負荷が下がります。
その代わり、車体は普通の車より重くなるでしょう。 そうであれば、運転時に排出される二酸化炭素や大気汚染物質が多くなります。
運転時の環境影響を考えて合成樹脂製の軽い自動車をとるか、製造時の環境負荷を考えて重いけれども天然材料を使用した自動車をとるか。 どちらが良いかは、判断する人の価値観によります。
それでは、石鹸と合成洗剤とは、どちらが「環境にやさしい」のでしょうか。 ずいぶん前に語り尽くされたような話ですが、改めて考えてみましょう。
合成洗剤が環境に悪いといわれる理由は魚毒性です。 洗剤が魚の鯛を傷めるため、魚は呼吸できなくなり死んでしまいます。

石鹸ではそういう影響が少ないので、石鹸の方が環境にやさしいという人は、その点を強調します。 石鹸や合成洗剤が使われるのは、ほとんど家の中です。
下水道や合併浄化槽がいまほど普及していなかった頃は、家庭排水はそのまま川に流されていました。 下水処理場の能力も以前は十分とはいえず、下水道に流された合成洗剤も十分には分解処理されずに、一部は川や海へ流れていました。
1960年代には多摩川の水が洗剤の泡だらけになることもあり、いろいろなところで問題になりました。 いまの日本では、半数以上の家庭からの排水が下水管を通って下水処理場で処理されています。
都市部では、ほぼ全戸と言って良いでしょう。 また、最近の合成洗剤は分解しやすくなっていますし、下水処理場の能力もずっと向上しました。
処理場の下流で、合成洗剤のために魚が死んで浮くということはまず考えられません。 そうなると、下水道地域にある家庭で使う合成洗剤の魚毒性は考えなくてもよいことになります。
問題になるとすれば、いまでも家庭排水が直接川へ流れ込んでいる地域です。 また、キャンプに行って川で洗い物をするならば石鹸のほうがよいと言えますが、そもそもキャンプの後始末は家に帰ってからすべきでしょう。
合成洗剤には植物系と石油系があります。 植物系合成洗剤は植物油脂、石油系合成洗剤は石油から作られます。
石鹸もまた、植物油脂からできています。 毎日、大量に採掘される石油のなかで、合成洗剤になるのは全体のごくごく一部です。
合成洗剤を作っても作らなくても、消費される石油の量にはまったく変化がないといっていいでしょう。 石鹸と植物系合成洗剤の原料としてよく使われるのは、パーム油(ヤシ油)です。
パーム油は、熱帯地域のオイルパーム・プランテーションで育てられるアブラヤシから採取されます。 マレーシアではオイルパーム・プランテーションの拡大によって、1990年から2002年までの間に、万畑の熱帯林が消失したと言われています。
また、プランテーションには、子供たちが過酷な労働を強いられるというような労働問題や、農薬の問題があるとも指摘されています。 もちろん、きちんと環境を保全し、適正な労働条件で経営されているプランテーションもあるわけですが、そうでないところもあるようです。

もしも石鹸や植物系合成洗剤の消費量が飛躍的に増えて、より大量のパーム油を日本が輸入することになったら、熱帯林がさらに減るかもしれません。 製造時のことを考えると、石油系合成洗剤のほうが自然環境に対する環境負荷は小さいと言えるでしょう。
「環境にやさしい」洗剤として、廃油から作るリサイクル石鹸があります。 原料には、使用後の天ぷら油がよく利用されます。
これならパーム油を消費しないし、石鹸だから魚毒性も弱く、廃棄物の減少にもつながります。


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